オフィスの原状回復はどの程度必要?工事費用の相場と注意すべきポイントを徹底解説
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オフィスを移転する場合は、原状回復工事が義務付けられていますが、具体的にどの程度まですればいいのか分からない人も多いと思います。本記事では、原状回復の範囲はもちろん、費用の相場や注意すべきポイントを解説しています。オフィス移転の担当者はご参考になさってください。
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原状回復工事って何?
原状回復工事とは、オフィスの退去時に、入居時の状態に戻すための工事のことです。原状回復工事では、入居時に施した内装や設備、持ち込んだ家具や機器を撤去するほか、傷や汚れもきれいな状態に戻します。
これは民法621条「賃借人の原状回復義務」において借主側の義務として定められたものです。民法上では経年劣化による損耗は原状回復の対象外となりますが、オフィスでは経年劣化も借主側の負担で回復を求められる点に注意しましょう。原状回復の具体的な範囲については、契約時にあらかじめ定めておくことが一般的です。
原状回復に必要な範囲
前述したとおり、原状回復工事が必要な範囲は契約によって異なります。一般的には、次の部分について原状回復が求められます。
- オフィス家具や備品の撤去
- カーペットの張替えや床の再塗装
- 電気設備や各種回線の撤去または回復
- 床下配線の撤去
- 看板類の撤去
- 壁紙・クロスの一部または全部張り替え
- 天井ボードの張り替え、補修、再塗装
- 増設した間仕切りやパーテーションの撤去
- その他の造作物の撤去
- 床、窓、天井の汚れのクリーニング
入居時の状態に戻すためには、自社で用意した設備機器や配線、家具の撤去のほか、床や壁、天井のクリーニングも必要です。
経年劣化は契約内容によって対応が異なる
賃貸オフィスの原状回復において、経年劣化による損耗については契約内容によって対応が異なります。経年劣化の具体例には、日照による壁や床の変色や湿気による窓枠の傷みなどがあります。
前述したように、民法621条では経年劣化の損耗について原状回復義務はありません。しかし、契約時に原状回復の範囲として経年劣化が含まれている場合、借主側には経年劣化による損耗についても原状回復工事の負担が求められます。
原状回復が必要な範囲については、トラブルにならないよう契約前にしっかり確認しておくことが大切です。
原状回復工事の費用相場:オフィス規模別
原状回復工事の費用は、一般的に坪あたり5~10万円が目安といわれています。大手デベロッパーのビルの場合は、坪あたり15~20万円程度から高いもので坪30万以上になることもあります。
オフィスの規模別では、100坪以内の小・中規模オフィスで坪あたり5~8万円前後、100坪以上の大規模オフィスでは坪あたり7~10万円前後が相場です。
とはいえ、原状回復にかかる実際の金額はビルのグレードや内装の作りこみ具合、マーケット情勢によって異なります。正式な金額を算出したい場合は、現地調査を実施しましょう。
支払いのタイミング
原状回復工事に対する費用の支払いタイミングは、工事を行う業者によって異なります。具体的には、工事前に全額を支払わなければならないケース、着工前と完了後に分けて支払うケースなどさまざまです。
工事費用の支払いでトラブルとならないよう、原状回復工事を発注する前に支払いのタイミングを確認しておきましょう。
原状回復工事の具体的な流れ・スケジュールとは
原状回復工事の具体的な流れとスケジュールは以下のとおりです。
原状回復工事の具体的な流れ
- オフィスの賃貸契約書の確認
- 現オフィスの解約通知
- 原状回復工事の見積作成
- 原状回復工事の発注
- 着工準備
- 原状回復工事
原状回復工事のスケジュール
- 賃貸借契約終了日の6ヶ月前:解約通知・原状回復工事見積依頼
- 賃貸借契約終了日の2ヶ月前:原状回復業者へ発注
- 賃貸借契約終了日の1ヶ月前:原状回復工事着工(工事期間は2週間~が目安)
- 賃貸借契約終了日まで:原状回復工事完了
このように、原状回復工事が完了するまでには6ヶ月程度の期間を要します。原状回復工事が完了し退去するまで、一時的に新オフィスと二重に賃料が発生する可能性がある点に注意が必要です。
また、原状回復工事に着工する前に、新オフィスへの引っ越しが完了していないと、原状回復工事の完了と新オフィスへの移転の両方が長引いてしまう可能性があるため、なるべく早い時期に管理会社と日程を決定しておきましょう。
原状回復工事を行う際に注意すべきポイント
原状回復工事を行う際には、コスト高にならないよう、またスムーズに退去できるよう次の点に注意しましょう。
事前に契約内容を確認しておく
原状回復工事の見積りを依頼する前に、賃貸契約書を確認しましょう。賃貸契約書には、原状回復に関する取り決めが記載されています。
原状回復の範囲や条件、経年劣化への対応などは、契約内容に従い工事を行わなければなりません。また、契約内容の範囲よりも広く工事を実施すると、必要以上にコストをかけてしまうことになります。
工事の抜け漏れやコスト高が発生しないようにするためにも、契約内容の確認は重要です。
遅延も想定し、余裕を持ったスケジュールを立てる
原状回復工事には、2週間以上の期間がかかります。大規模なオフィスでは1ヶ月程度かかることもあるでしょう。それに加え、トラブルや想定外の事態で工事期間が予定より延びてしまうことも考えられます。
退去日までに工事が完了しなかった場合、次の入居者が予定通りに入居できずに遅延損害金を請求されたり、入居期間が延びることで賃料が発生したりする可能性があります。
これらのリスクを避けるためにも、早めに発注するなど、余裕を持ったスケジュールを心がけるとよいでしょう。
業者の閑散期に移転を行い、費用を削減
原状回復工事にかかる費用を抑えるポイントとして、「業者の閑散期に依頼する」という方法があります。
一般的に、工事業者の閑散期は5~8月です。この時期の依頼であれば、工事業者もゆとりをもって工事にあたってくれるでしょう。万が一工事中にトラブルが発生した場合も、閑散期であれば迅速に対応してもらえる可能性があります。
入居時の敷金を活用
原状回復工事にかかるキャッシュアウトを抑えるために、すでに支払っている敷金を工事の支払いに活用する方法もあります。
入居時に支払った敷金は、契約条件に基づき返還されるものです。契約によっては、原状回復工事に充てる旨が定められているケースもあります。敷金をどのように活用できるかについては、契約書を再度確認してみましょう。
少しでも不安なことがあれば専門家に相談
原状回復工事をはじめ、オフィスの移転や退去について不安なことがある場合にはすぐに専門家に相談することをおすすめします。
相談先としては、オフィス移転専門のコンサルタントや不動産会社などが考えられます。
退去のための手続きや見積りの内容確認、敷金の確認など、不安や疑問点は専門家への相談で迅速に解消しておくと安心です。
原状回復費用を抑えたい場合は居抜き退去を検討する
内装や設備をそのまま次の入居者に引き継ぐ居抜き退去の場合、原状回復工事にかかる費用を大幅に削減できる可能性があります。
ただし、必ずしも居抜き退去が実現できるわけではない点にも注意が必要です。まずは貸主側に居抜き退去が可能かを問い合わせてみましょう。次の入居者が居抜きを希望する場合には、居抜き退去が認められる可能性があります。
まとめ|オフィス移転にお困りなら、サンフロンティア不動産にご相談ください
オフィス移転にあたっては、新オフィスへの手続きや引っ越しだけでなく、現オフィスでの手続きや原状回復工事など各種対応が必要です。
新オフィスと現オフィスの対応が同時進行となる部分もあるため、自社の業務を行いながらオフィス移転を進めるには大きな負担がかかることもあります。
現オフィスの退去にかかる対応をはじめ、オフィス移転に関するお困りごとが発生した際には、不動産のプロであるサンフロンティア不動産にご相談ください。豊富な経験と実績で積み上げた知見をもって、オフィス移転を強力にバックアップいたします。
記事監修者
菅野 勇人
宅地建物取引士
セットアップオフィスから一般的なオフィスまで、多種多様なオフィスビルの魅力や特徴を熟知したオフィス物件マニア。
スタートアップ企業の移転支援経験が多く、そこで得た知見を活かし、お客様の理想のオフィス探しを全力でサポートいたします。